レースの魅力と面白さ。それを伝えていきたい。 その2

VOL.16_1

片岡 龍也 

1979年生 愛知県出身
'92年カートレースデビュー。'93年SLカートシリーズ中部地方選手権スポット参戦。'94年中部地方選手権シリーズ参戦シリーズ6位。'95年全日本カートFA選手権参戦。'96年全日本カートFA選手権参戦シリーズ9位。'97年全日本カートFA選手権参戦シリーズ2位。'98年全日本カートFSA選手権参戦シリーズ6位。ヤマハカート(エンジン・シャシー)開発担当。'99年全日本カートFSA選手権参戦シリーズチャンピオン。'00年全日本カートFSA選手権参戦 シリーズチャンピオン。ヤマハカート・アドバイザー担当。フォーミュラトヨタ・レーシングスクール受講。'01年フォーミュラトヨタシリーズ参戦シリーズ2位。'02年全日本F3選手権TOM'Sより参戦シリーズ6位(優勝1回)。'03年全日本F3選手権TOM'Sより参戦 シリーズ3位(優勝1回)。'04年フォーミュラ・ニッポン参戦シリーズ7位/全日本GT選手権GT500シリーズ6位。'05年Team Lemansよりフォーミュラ・ニッポン参戦Forum Engineering LeMans7号車/TOM'SよりスーパーGTインターチャレンジ参戦。'06年Team Lemansよりフォーミュラ・ニッポン参戦/Team LemansよりスーパーGT選手権参戦/全日本スポーツカー耐久選手権参戦。'07年Team Lemansよりフォーミュラ・ニッポン参戦7号車/スーパーGT参戦/ Forum Eng.TOYOTA Team LeMans 6号車。
公式ホームページ http://www.tatsuya-k.com/

スーパーGT、フォーミュラニッポンという国内トップカテゴリーを走る片岡龍也選手。
“国内チャンピオン”という自らの目標はまだ実現していないが、
来シーズンに向かってさらにパワーアップしての活躍が期待される。
「モータースポーツをやっていて凄く楽しい」という
片岡選手に今回はトップカテゴリーを
走るようになるまでの努力などをうかがった。

チャンスは平等に来る。

僕なんかは恵まれていて、レースの世界に入るのにプライベートで大変な思いをしたとかはないんです。ただ、レースにデビューした時からメーカーの支援で走りましたから、求められる基準が優勝だったりと、目標設定が高いところにあって本当に厳しかったですね。“ルーキーの割りにはいい”なんていう見方はしてもらえませんから、もう怒られっぱなしでした。最初からそういう厳しい状況の中でしたけれど、上のクラスを走るための大きなチャンスもあったので、チャンスがいつ来てもいいように準備をしておく努力は常にしていました。
 例えば、フォーミュラニッポンやGT500に上がりたいという大きな目標があるわけですよ。それに向かって、今走っているカテゴリーのレース毎に“このレースで勝つ”とか“せめて表彰台に乗る”とか、小さな目標をはっきりさせて自分にいま何が必要か、何をすべきかを意識して取り組んできました。
 チャンスを与えられた時に、パフォーマンスを見せてそれをモノにする。チャンスって結構みんな平等にきてるんですけど、そこでモノにできるかどうかで差が出てしまう。モノにできなかった時に“力がない、運がない”って諦めてしまうと、次のチャンスはもう来ない。諦めなければ次のチャンスが必ず来て、それをモノにすれば一歩遅れるだけで、その一歩は取り返せる、そう思っています。

'07シーズンのスーパーGT500クラスをビヨン・ビルドハイム選手とのドライブで闘った#6 Forum Eng SC430。シリーズランキングは9位。

諦めない。

レースを走る中でのポリシーは「絶対に手を抜かない」ことですね。その瞬間、瞬間を諦めずに、精一杯走るというのが絶対に大事だと思っています。あたりまえのようですけど、レースをやっていると、どうにもならない日もあるんですよ。セットアップが決まらないとか、なんだか調子悪いとか、トラブルで既に周回遅れだとか。正直、ふてくされたくなるような時もあるんです(笑)。でも、やっぱり諦めない。諦めてる姿っていうのは、人には分かってしまいますからね。「オレはまだ死んでない!」っていうところを見せるような意識を常に持っています。
 それから、自分のその時その時の結果を客観的に観る力も必要だと思っています。“自分は頑張ってるのに”とか“努力してるのに”とか、そういったことは自分では決めないこと。頑張ってるとか努力してるっていうのは、人が判断することですから。変に自分で限界を作らずに努力して、そして客観的に自分を見つめた結果、今、何が足りないか。現実的に直せるところを直していくというふうに、細かく自分のレベルを上げて行くことも大切にしてきました。特に、これからモータースポーツに入るという人には、自分を客観的に分析し、何を直していけばいいかを考え、キチっとしたステップを踏んで上がってくることをアドバイスしたいですね。

'07シーズン、5/4に富士スピードウェイで開催されたスーパーGT第3戦では500クラスで3位を獲得した。

フォーミュラニッポンはTeam Lemansからは#7のマシンでエントリー。
'07シーズンのシリーズランキングは14位。

レースの魅力を。

僕らの頃はカートから4輪のレースに上がるステップが分からなかったんですが、今は4輪までのプランがしっかりできています。ところがジュニアのカートやってる子どもなんかは、メーカーのスカラシップを受けて4輪に上がるというプランをキッチリ組み立てすぎて、逆にそれが崩れた時に、諦めてしまう。そうじゃなきゃダメだって思ってしまうんですよね。カートで特に小さい子なら数年かかってもいいですよ。準備する時間は沢山ありますから、焦らずに諦めずに上を目指して欲しいですね。レーサーになったらカッコイイとかそういう単純なところ、たとえば松坂投手が60億でトレードされた時、それだけでも憧れるじゃないですか。そう言った意味でも夢を与えて、全体的なボトムアップとファンづくりをしなければいけないですよね。100人の中からでてくる天才よりも、一万人の中からでてくる天才の方が絶対凄いですから。
 僕自身、モータースポーツをやっていて凄く楽しいんですよ、面白いし魅力も有る。ただそれが世の中に伝わっていないことが悔しいですよね。外から見たらクルマが走ってるだけですから、大変に見えないですけど、人間がクルマと格闘している、死にそうな思いで走ってるという姿をもっと知ってもらいたいですね。コースや気象条件によっては本当に吐きそうになりながら走ってますから。そういう中でクルマと格闘しながら、さらに人間同志、車同志のバトルがあるんですけど、なかなかそれが伝わらない。テレビや様々なメディアでもっと取り上げてもらって、モータースポーツの魅力をもっと伝えて行ければと思っています。

'07年の十勝24時間耐久レースには話題となったハイブリッドマシン、デンソー・トヨタ・スープラHV-Rのドライバーとして飯田章、平中克幸、A・クートの各選手とともに参戦。2位に19周の大差をつけて総合優勝を獲得、記録にも記憶にも残るハイブリッドカーによる十勝24時間耐久レース初優勝をもたらした。

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