勝って結果を残すこと。それが、すべてを証明してくれる。 その2

VOL.15_1

木下みつひろ 

1965年生 長野県出身
'81年、高校2年の時レーシングカート・デビュー戦初優勝。'86年、レーシングカート・全日本ナショナルFA/A1クラス参戦・優勝。'87年富士フレッシュマンレースデビュー。'88年、富士フレッシュマンレース・レビン/トレノクラス優勝2回・2位1回(全6戦)。'89富士フレッシュマンレース・NA-1600クラス優勝2回・2位1回(全4戦)。'90年、富士フレッシュマンレース・NA-1600クラス優勝4回・総合優勝。'91年ミラージュカップ参戦・シリーズチャンピオン。'92年、シビックインターカップ参戦・シリーズチャンピオン。'93年フォーミュラ・トヨタ参戦優勝7回・2位2回(全9戦・最多優勝回数記録樹立)シリーズチャンピオン。N1耐久参戦、全日本F3選手権デビュー。'94年、全日本F3選手権、JTCC参戦。'95年、JTCC参戦・ルーキー賞獲得、N1耐久参戦・TIラウンド優勝。'96年、JTCC参戦・入賞、スーパーN1耐久参戦 優勝2回・シリーズ3位。'97年~、全日本GT選手権参戦、スーパー耐久参戦(1クラス鈴鹿サーキットコースレコード樹立)。'99年メモリアルレース アルテッツァ・ワンメイクレース優勝。2000年、十勝24H GTクラス・総合優勝。2001年、スーパー耐久Nプラスクラス参戦。2002年、スーパー耐久クラス1シリーズチャンピオン、全日本GT選手権GT300クラス4位。2003年、スーパー耐久、スーパーGT300クラス共にシリーズチャンピオン。
レーシングドライバー。

今シーズン、ハンコックの専属ドライバーとして
ハンコックNSCポルシェのステアリングを握る木下みつひろ選手。
それは、単にチームの移籍ということではなく、
高校2年のレーシングカート・デビューから、
常に追い続けてきた
“プロのレーシングドライバー”としての独立でもあった。
今回は、プロについての思いなどをうかがった。

一年生の気持ちを持って。

今回の移籍は自分にとって大きな転機なんですよ。昨年まで15年ほどエンドレスの社員という立場で走っていましたが、今シーズンから完全にプロとして独立し、ハンコックさんとのドライバー契約で走り始めたわけです。いつかプロになりたいという気持ちはありましたし、そこに憧れてレースを始めたので、これだけ車の事に集中してライフスタイルを送れるのは僕の夢でしたから、今すごく充実しています。
 同時に、プロとしての厳しさも実感していますね。これまでも結果を残すためにがんばってきたつもりですが、独りになってみると、まだ甘えがあったことに気付きます。プロは自分自身を商品として磨いていかなければならない世界ですから。ドライバーを職業とするのは今シーズンからなので、20年レースを走ってきたという感覚よりも、これまでとは意識を切り替えた中で、今はプロになって一年生という気持ちを強く持って取り組んでいます。
 それが出来たのも、エンドレスさんに社員として走らせていただいたおかげです。チャンピオンも取れたし、多くの経験を積ませていただいたことが今に繋がっているので、本当に感謝しきれないくらいに感謝しています。

今年、自分自身の新しいフェーズにチャレンジする木下選手。「やっぱり諦めないでやるっていうのはこの世界の一番のポイントだと思います」。

自分が動くこと。

これまでと大きく違うのは、自分が動かないと何も始まらないという厳しさですね。タイヤの開発という仕事でもレースの中でも。どんどん自分を主張してかなきゃいけないし、これまでは黙っていても時間が流れていたのが、黙っていたら時間は流れないイメージですね。やっぱりそれをすごく実感しています。
 フィジカルな面で健康管理もやっていかなければならないんで、トレーニングも始めました。筋肉や体力増強とかを総合的に鍛えています。大きなプレッシャーがありますから、気持ちの上でやらずにはいられないという感じです(笑)。
 走り方もメンタルな部分で大きく意識が変わりましたね。これまで以上に冷静に物事を見るようになりました。勝つためだけのレースだったら、気持ちだけで無理をしてしまうところもあるんですが、それをやって接触しトラブルをかかえるとパーツを活かしたレースが出来なくなってしまう。そのパーツの完璧なパフォーマンスを出すためにも、それはできるだけ避けたいんです。特に、一年目で車を仕上げ、タイヤを作っていく重要な時期ですから。相手のマシン、相手のドライビング、タイヤ、全ての動きを見ながら、どこが劣っているか、どこが勝っているか冷静に観察し、相手が劣ってきた時に抜いていくような見方になってきてると思います。もちろん、常に表彰台を狙っていますので、いける時はいきますけどね(笑)。

坂本祐也選手とのペアでドライブする#33ハンコックNSCポルシェ。7戦を終えた時点でチームポイント15位、ドライバーズポイント17位。

タイヤの開発は一般車用からレーシングタイヤまで担当。特にブランドイメージを高めるレース用タイヤの開発は急ピッチで進められる。

何かを残していきたい。

ハンコックさんはこれから中国、アメリカ、ヨーロッパそして日本で重点的に製品を強化していく計画で、本当に真剣にやって行こうというスタンスのところに、たまたま自分が入ることができたのは大きなチャンスだったと思います。そのタイヤ開発を担当するわけですから、世界に通用し、世界で高い評価を受ける良い物を作っていくために、相当自分にムチを入れていかないといけないと思っています。
 プロのレーシングドライバーというだけでなく、そこに何かを残していきたいという想いは以前からありました。ですから、自分にとって今回のプロジェクトに参加できることの大きな意味の一つはそこにあります。良い物を作っていこうという強い意志が、ますます実感として湧いてきています。
 スーパーGTで勝つことはもちろん、自分が開発に携わったタイヤがアメリカやヨーロッパのレースでも勝ってくれれば最高ですね。それが自分のやってきたことの証明だし、一番大きな形として残せるものだと思います。毎回、走るたびに学ぶことがありますし、日々タイヤを開発する中で学び続けていくことに終わりはありません。

ハンコックは中国、欧米、そして日本に重点を置いて、一層のブランド浸透を図る。

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