勇気を持って、一歩踏み出そう。そのメッセージをクルマに託して。

VOL.6_1

近藤正純・ロバート 

1965年 米国サンフランシスコ生まれ。
1988年慶應義塾大学経済学部卒業、同年日本興業銀行に入行。同行在職中に米国コーネル大学経営大学院に留学(MBA)。1998年有限会社レゾナンス出版(現株式会社レゾナンス)を設立し、代表取締役に就任(現任)。フリーマガジン「ahead」プロデューサー。

http://www.ahead-magazine.com/

首都圏を中心に発行され注目を集める月刊フリーマガジン「ahead」。
クルマとバイクをメインテーマに
無料配布のイメージを払拭するクォリティーとコンテンツで多くの支持を集める。
インターネットで申し込んで職場単位に配送をメインとしたスタイルも、
店頭などで持ち帰るフリーペーパーの概念を大きく変えた。
広告も従来は無料配布誌よりも有料雑誌に媒体価値が置かれていたが、
無料・有料ではなく読者に支持される媒体かどうかに広告掲載の価値があるという
マーケティングを実証するきっかけともなった。
今回は「ahead」プロデューサー 近藤正純ロバート氏にお話しをうかがった。

一歩踏み出そう。

日本は今、歴史上最もユートピアに近い豊かな国だと思うんです。世界でも戦争や飢餓に苦しんでいる国もあるのに日本ではそれもなく、フリーターで生きていける。なのに、なんとなく閉塞感があって元気がなく、年間数万人が自殺しているのを見ると、どういうことなんだろうと思いますよね。こんなに豊かな世界に生きているのに好きなこともできない、あるいはやらずにいるのではもったいない。勇気をもって『一歩踏み出そう』ということが今の日本に足りない。そのメッセージを伝えたいというのが僕らのコンセプトなんです。
 きっかけは僕がまだ銀行員で不良債券問題が吹き荒れていた当時のこと。たまたま一目仙人のペンネームで祖父が残した著作を読み、その生き方の哲学に深く感動して「これを現代版にして金融マンに伝えたい」と強く感じたんです。それで銀行を辞め、出版企画を数十社に持ち込んだんですが、ことごとくダメ(笑)。ならば自分でやるしかない、と同じ銀行にいた高畑、現在aheadの編集長ですが、彼と相談して「もっと多くの人に『一歩踏み出そう』と訴える出版社を作ろうよ」と一緒に立ち上げたんです。とはいえ資金もないし、マンションのリビングを事務所に二人で寝起きしながら、まず「紙屋だ」「印刷屋だ」(笑)と全くの素人が手探りで始めました。

レース参戦を通じて「闘う本能の目覚めがありました(笑)。みんな何故あんなに熱くなってサーキットを走るかとか、F1の世界がどんなに凄いものなのか以前より良く分かるようになりましたね」。銀行員の頃には、クルマの雑誌に関わりレースに参加するとは想像もしなかったという。近藤氏自身、一歩を踏み出し、クルマに出会って人生が大きく変わった一人であることは間違い無い。

自動車専門誌を中心にメディア関係を対象として'89年から恒例で行われている「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」にも初参加。S耐久ドライバー丸山浩氏、レース経験豊富な出来利弘、加藤彰彬の両氏とともにチームを組んで常連に挑み、全員初出場ながら参加25台中10位完走。

月刊フリーマガジン「ahead」。

3年程で何冊か単行本を出版した頃、思い出したのが銀行員だった当時のこと。暗いムードの昼休みに「新車を買うんだ」とか「またバイクに乗りたい」なんていう話題になると、急にみんなの目が少年のように輝きイキイキ話しはじめるんですよ。そういう力がクルマやバイクにはあるんです。単に『一歩踏み出そう』と訴えるだけではなくクルマやバイクのように“本能的に好き”とか“ワクワクすること”をテーマとしながら、その中に僕らのメッセージを込める雑誌があってもいいんじゃないの?ということで企画をスタートしました。調査では男性の7~8割がクルマやバイク好き。でも専門誌の購読は2割以下。ということは、そういう楽しいものを忘れてしまっているんじゃないかと。ならば、それを直接身近に届けて、かつてあれだけワクワクした感動を忘れていないかと呼び掛け、“やってみようか”と一歩を踏み出すきっかけにすることで、仕事にも生き方にも影響を与えるんではないかと考えたんです。通常の書店ルートではなく、無料配布でインターネットからの申込み、職場単位で直送というスタイルで'02年の12月に創刊したのが月刊フリーマガジン「ahead」です。これを始めて改めて感じたのは、クルマがいかに男達にインパクトを与えるものかということ。クルマをきっかけに人生が変わったりする人が読者からも続々現れるので、その分責任も感じます。

男性ビジネスマンを対象としたahead。「自分たちが『こんなのあったらいいね』という感覚で作りました」。ビジネスマンが持ちやすい厚さ、サイズ、デザインにこだわった。'05の春からは合本という形で女性向けの『ahead femme』もスタート。「クルマやバイクを買う上では奥さんの了承も不可欠なので、夫婦のコミュニケーションツールをコンセプトに奥さん向けの誌面としました」。

クルマが人の成長を促す。

僕自身はというと、若いころに峠を攻める走り屋だったわけでは無く、実は普通にクルマとつき合ってきたんです。ところが一度「サーキットの狼になる」という特集で、こんなに身近なレースがありますよと紹介をしたところ『編集部もレースやってるんですよね』というメールがあって。ところが実はだれもやってなかった(笑)。で、人にすすめる以上、自分もやらねばと'04年からヴィッツレースに参戦する決意をしたんです。初めてのレースは茂木で、普通2分3~40秒で走るところを3分15秒もかかり、パッシングされっぱなしというデビューでした。(笑)。それから練習も重ね、昨年は新しいチーム体制で年間参戦をしています。
 その詳細を『人はなぜ闘うのか』という連載で紹介していますが、グリッドでの興奮やアドレナリンの分泌、闘う本能の目覚め、爽快感、仲間との連帯感や感謝、「生きてる」という実感、など凄く大きな刺激を受けています。また、物理の法則の中で動くクルマをロジカルに突き詰める理性とそれを操って競う感性とのバランスの重要さ、リスクマネージメントからチームワークまで、クルマで競うことがこんなにも奥深く、こんなにも人間的成長を促すものだということを改めて知りましたね。サーキットを走りはじめてからフルブレーキも踏めるようになったし、クルマの限界がどの辺にあるかもわかってきて、公道ではすごく安全運転になりました。日本はこれだけの自動車立国になってきているわけですから、安全の為にもサーキット走行やクルマは全員必修でやるべきですよ(笑)。
 現在「ahead」の配布は首都圏に限られていますが、このメッセージを全国に届けるべく調整中です。みなさんの地域にお届けできるようになりましたら、是非手に取ってみていただきたいですね。

ネッツカップヴィッツ関東シリーズ第6戦では6位入賞。一旦表彰台にあがったものの、終了後の車検でスリップサインが出ていることが発覚し失格、幻の表彰台となった。

'04年から参加を始めたヴィッツレース。2シーズン目の昨年は全損や失格も経験。一方最終戦ではベストラップタイムを出すなど、確実にステップアップしている。

  • facebook
  • twitter