スーパーカーが持つ独自の世界観。それをリアルに伝えていきたい その2

VOL.18_1

平井 大介 

1975年 千葉県生まれ
千葉県松戸市出身。大学卒業後、株式会社ネコ・パブリッシング広告部に入社、カーマガジン編集部に異動し編集者としての仕事をスタート。'97年発刊のROSSOに'99年より異動、副編集長を務め、昨年12月に編集長に就任。
http://www.rosso-mag.com/

スーパーカーをメインコンテンツとする雑誌「ROSSO」。
そこにはフェラーリ、ランボルギーニなど、
第一次スーパーカーブームを体験した
年代層の心に独特の響きを与える名前が登場する。
アンケートハガキから読者層のメインは30代後半から40代。
その中に小・中学生からのハガキも多く混じる。
スーパーカー世代の二世が親子でスーパーカーを楽しんでいるのかもしれない。
滅多に触れることのできない憧れのクルマに接し「読者に代わって体感し、
その世界観を伝えるのが僕らの役目です」という
ROSSO三代目編集長・平井大介氏にお話をうかがった。

自分でいいのか?

この仕事をしていると、常に海外に行ってスーパーカーに乗っているみたいに思われるかもしれませんが(笑)滅多にそんなことはないんですよ。ところが昨年は2月にフランス本社でブガッティ・ヴェイロン、10月にはフェラーリ本社で430スクーデリア、続く11月にはランボルギーニ本社でレヴェントンに乗るというチャンスに恵まれ、これは本当に幸運な『特別な年』でした。特にレヴェントンの試乗は日本の雑誌として唯一ROSSOだけにいただいたものでしたから、この仕事に関わっていて本当に良かった(笑)。こうした試乗のチャンスを与えられたことに幸運を感じると同時に、それ以上に「伝える責任」のプレッシャーを感じ「自分でいいのか?」と思うんですよ。でも滅多にないチャンスですし、これを逃せば一生悔やみますしね。
 試乗というのは限られた人間だけのチャンスです。それを活かすために、できることは全部やって『乗った人間が何を感じたか』を伝えなければなりません。人によっては、先入観を持たないために敢えて資料は見ずに試乗するという方もいますが、僕の場合は事前に入手できる資料は徹底的に目を通し、頭に入れ『自分が読者だったら何を知りたいのか』というテーマを作った上で試乗に臨みます。たとえば“世界20台の限定生産の世界とは?”とか“その価格の価値はどこにあるのか?”とか。そういう世界観が伝わればと思って、真剣勝負で記事を書かせてもらっています。

世界観を伝えたい。

それでも我々の試乗だけでは伝えきれない部分があります。それはオーナーとして常に乗っていなければ体験できない世界観です。経済的なこともあり、現実にスーパーカーのオーナーとなれる人は限られてしまいますが、もしオーナーになったのなら飾るだけでなく、是非乗って走っていただきたいと思いますね。飾っておくだけならば、ディーラーで見るのと変わらないし、モーターショーなどでカタログを手に入れることと同じだと思うんですよ。
 せっかくそのクルマを所有し、自分のモノとして自由に乗り回すことができるのですから、その車に込められた世界観を感じていただきたいし、オーナーだからこそ分かる“このクルマはこんな世界観で造られているんだ”ということを“乗る事”を通じて語っていただき、我々と一緒に伝えていって欲しいと思いますね。
 自動車雑誌ではライバル対決のような企画が時々ありますが、例えばフェラーリとランボルギーニを比べても、片やサーキットの技術で究極の市販車を目指し、片や公道から究極を目指すという、それぞれアプローチも考え方も目指す方向も違うクルマを比較することはあまり意味がないと思っています。僕らとしては、そういう比較からでなく、そのクルマだけが持つ独自の世界観や魅力を様々な角度で伝えて行きたいと思っています。

フォルクスワーゲングループ傘下となったフランスの名門ブガッティが送りだしたヴェイロン。フランスでの試乗の日はあいにくの雨。「最高出力1001馬力、400キロ出るという車に乗れる機会は滅多にあるものではありません。2億円という価格が頭をよぎる中、ここでアクセルを踏まなければ男じゃない!と雨の中、寿命が縮まるような緊張の中でハイスピードを体験しました」
http://www.hobidas.com/auto/impression/article/68943.html
 

昨年11月、世界限定20台のみ製造のランボルギーニ・レヴェントンにイタリアで試乗。「価格は100万ユーロ(約1億5800万円)。現在市販しているランボルギーニ・ムルシエラゴの約4000万円弱に対して4倍のプライスです。これはランボルギーニのブランド価値を高めるための勝負でもあるんです」。
http://www.hobidas.com/auto/newcar/article/68415.html

100通りのスーパーカー。

よく“スーパーカーの定義って何ですか?”と質問されます(笑)。多くの人が持っているスーパーカーの共通イメージは“速い”“高い”“カッコいい”“希少”の要素が一般的で、本誌で特集するときもそういったラインで取り上げますが、はっきりした定義はありません。あくまでも僕個人の意見として言えば“100人いれば100通りのスーパーカーがある”と思っています。その人が“夢を見ることができるクルマ”がその人にとってのスーパーカーじゃないでしょうか。たとえ軽自動車であっても「これが僕のスーパーカー」だと思えば、それはその人のスーパーカーなんです。 昨年、トミカから発売された「ミツオカオロチ」のミニカーが16万台売れたと聞きました。クルマ離れといわれる今の子供たちにもオロチのデザインが認められているということは、いつの時代でも不変のカッコよさというのがあって、そういったクルマのミニカーが人気なのは僕らの頃と同じなんですね。編集部へも「フェラーリが好きです」なんていう小・中学生からのハガキが意外と多く、これは他のクルマ雑誌にはあまりない読者層なんです。子供たちのクルマに対する“夢”や“憧れ”は無くなっているわけではありません。今のスーパーカーブームを見て育った子供たちが大人になる頃、電気自動車になっているかもしれませんが、その時代に合った第4次スーパーカーブームが興るのではないでしょうか。そんな期待をしています。

フェラーリ430スクーデリアには昨年10月イタリアでの試乗。開発にはあのM・シューマッハが携わっている。「第2世代に進化したF1スーパーファストの変速はわずか100分の6秒で、パドルを引いた瞬間にギヤが繋がり後ろから押し出される感覚。ちなみにこれは数年前のF1マシンのレベルというから驚き。スポーツカーとF1の究極的な融合を得たスーパーカーですね」
http://www.hobidas.com/auto/impression/article/74676.html

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