クルマ好きにはいろいろなカタチがある。それを全て肯定するところから始まる。 その2

VOL.17_1

鵜飼 誠 

1973年 愛知県生まれ
子供の頃に家族が転居し神奈川に育つ。大学卒業後、株式会社ネコ・パブリッシングに入社、デイトナ編集部に配属され編集者としての仕事をスタート。その後、カー・マガジン編集部を経て、2005年からジェイズ・ティーポ編集長、2007年からホンダ・スタイル編集長を兼任。誌面ではキャル吉の名前でも登場。
http://www.j-tipo.com/

趣味の日本車雑誌「ジェイズ・ティーポ」。
日本車にこだわりながら、新旧含めてクルマの楽しみを提供している。
このところ手頃な大きさに走る楽しみを満載したクルマ、
ボーイズレーサーに注目し3月号でも特集を組んでいる。
今回も編集長、鵜飼氏にお話しをうかがった。

服系とおもちゃ系。

クルマの楽しみ方は大きく2つに分かれると思うんですよ。一つはクルマに似合うお店だとか場所にいく時に乗って、服のように楽しむ楽しみ方。もうひとつはガンガン走らせて、おもちゃとして遊ぶ楽しみ方。アメ車でクルマ好きになった僕の場合は服の様に楽しむ方だったんですね。クルマが汚れたり傷んだりするのは可哀想だと思っていましたから、ガンガン走らせて遊ぶという感覚はありませんでした。学生の頃バイトしていたガソリンスタンドの仲間は走り屋系が多くて、僕だけ服系。だから、ちょっと浮いてましたね(笑)。
 車雑誌の編集の仕事に関わるようになって、いろんな視点でクルマを見るようになり、サーキットレース、ゼロヨンなどモータースポーツに参加する機会もあって、クルマの楽しみ方全てを肯定するようになりました。ただ、ジムカーナは参加したことがなかったので、ボーイズレーサーに注目して特集もやっていることだし、これは体験しておいた方がいいかな、と思って昨年初めて参加したのがダイハツチャレンジという大会。そしたら、これが面白くて、ハマってしまったんですよ。

ジムカーナ出走前にドライビングポジションを確認する鵜飼氏。「クルマ雑誌の編集者なのに、実はジムカーナは初参加なんです(笑)」とのこと。この時の参戦レポートはジェイズ・ティーポ3月号に掲載されている。

ジェイズ・ティーポ3月号(1月16日発売)

ジムカーナの楽しさを再認識。

お借りした車輌での参加でしたが、ナンバー付の車輌でOK、普通に走ることができればだれでも参加できるという、ビギナーにも参加しやすい大会なんですね。ジムカーナは一台づつ走るので、サーキットのように後ろからくる速いクルマを気にしながらということもないので、安心して自分の走り方に集中できるのもいいところですよね。
 それから、一回の走行が短いので集中も短くて済むことや、次の走行ではこうしてみようといった工夫がしやすくて、それがタイムにすぐ表れる。絶対スピードは低いので、クラッシュする危険も少ないし、ナンバー付のノーマル車輌ならお金もあまりかからず遊べるのもいいですね。カーブではらんでしまった時に、どう操作するとどんな挙動になるのかといったことも分かって、初心者が安全にクルマを運転するためのスキルアップにも最適だと感じました。
 最初は服系だった僕ですが、モータースポーツを体験することで走ることの楽しさも知りました。ただ、例えばドリフト走行を見て“スゴイ!”と思っても“自分にはできないよ”と思うのが普通のドライバーで、モータースポーツは敷居が高いですよね。その点ジムカーナは手軽に参加できるし、操る楽しさを体感できるんで、初体験でハマってしまうほどの楽しさを伝えていきたいと思いました。

ダイハツ・チャレンジカップで走行中の鵜飼氏。この日は4本走行し、毎回タイムを短縮。「ルーキーとしてはまあまあ(笑)。」と納得。副編集長とのダブルエントリーのためゼッケンは二つ。

愛車はアメリカならではの車輌ジャンル、セダンピックアップの1970 フォード・ランチェロ・スクワイア(手前)と1983 マーキュリー・ゼファーZ7 GS。「夢はランチェロで大好きな沖縄を走ってみたいこと。今年の夏こそは、といつも思うのですが」。

そしてボーイズレーサー。

僕はもともと“このラインとこのラインと繋いでデザインしたらこんな大きくなっちゃった”みたいなアメ車が好きだったので、日本車はどうも小さくてコマゴマしているなあ、なんて思っていたんですよ(笑)。ところが、随分以前に“決められたワクの中で技術を磨くからこそ技術の進歩があるんだ”なんていうことを聞いて、なるほどと納得したことがありました。
 だからという訳ではないんですが、今、時速100キロ以下でも運転を楽しめるジャストなサイズが魅力のボーイズレーサーに注目していて、ジェイズ・ティーポ3月号でもボーイズレーサー特集第2弾をやってしまいました(笑)。ボーイズレーサーとして走って楽しければ新旧問わず取り上げています。現代のクルマは様々なデバイスやコンピューター制御の進歩で乗りやすく速いクルマになっていますが、実は80年代のクルマも結構速いんですよ。あまりデバイスなどが無い分、車輌が軽いのでよく走るんですね。それも楽しさですし、その時代のクルマの魅力ですよね。
 編集の仕事は、自分がのめり込んで行かなければ読者の満足や共感が得られない部分もあるし、のめり込み過ぎても狭くなるし、そこのバランス感覚をうまく保って、垣根を作らずクルマの楽しさを伝えていくことが必要です。そんな中で今年は自分自身のジムカーナにちょっとのめり込んで、参戦報告も伝えていこうかな、と思っています。

模型屋さんの店頭ではなく、鵜飼氏のクルマキットのコレクション。これでも一部に過ぎないらしい。

鵜飼氏の車好きに多大な影響を与えたお母様が新車で購入したグロリアのワゴン。鵜飼氏が免許をとって最初に乗った思い出の1台でもある。「最高の『癒しグルマ』でもあり『モテグルマ』でしたね」。

  • facebook
  • twitter