ENKEI

  • youtube

HUMAN TALK

HUMAN TALK

ENKEIをキーワードに業界の著名人を、ご紹介します!
ここでしか読めない情報も盛りだくさん。

加藤 哲也 自動車メーカーのヘリテイジを発信する。

HUMAN TALK VOL.225 加藤 哲也 自動車メーカーのヘリテイジを発信する。

PROFILE

加藤 哲也
KATO Tetsuya

1959年東京都生まれ。
大学を卒業してテレビ番組制作会社勤務を経て、1985年に二玄社に入社。カー・グラフィック編集部に配属され、1995年に同誌副編集長、2000年に編集長を務めた。2010年、二玄社から版元を引き継ぎ設立された株式会社カーグラフィックにて、代表取締役社長に就任した。

8月4~6日に千葉県の幕張メッセで
開催されたAUTOMOBILE COUNCILは
他の自動車イベントと雰囲気は異なり
まるで雑誌企画を生で見ているような内容だ
昨年から開催されたこのイベントの趣旨
目指す未来を主催者の加藤哲也さんに聞いた

加藤 哲也

 自動車専門誌カーグラフィックは今年で創刊55周年。1962年の創刊当初から自動車の文化、文化と叫んできましたが、現状を見る限り欧米に比べて自動車文化がまったく根づいていないな、という思いがあるんです。それは我々自身の反省材料でもあります。ひとつの媒体の中だけで叫んでいても、限界がある。だとすれば自動車業界を横断するムーブメントを起こしていかない限り、きっと日本は変わらないのではないか? 自動車業界が手をつなぐ、チームジャパンとして、みんなで自動車文化を声高に叫んでいかないといけない。そんな思いを形にしたのが、このオートモビルカウンシルというイベントなのです。

加藤 哲也
2017年のAUTOMOBILE COUNCILの模様。ただ車両が並んでいるのではなく、その車やメーカーの開発ストーリーが見えてくるというコンセプトが、このイベントの醍醐味だ。まさに雑誌内の企画を生で見るような感覚で会場を散策できる。
加藤 哲也

日本に自動車文化を根づかせたい

 なぜ、日本に自動車文化が根づかないのか? 考えると、日本は新車のセールスプロモーションや販売キャンペーンには積極的に取り組んできましたが、そこに至るまでの過程を切り捨ててきていたんです。ただ、じつは日本の自動車産業が始まって100年近くの時間は経っているんです。マツダは2020年に創業100年を迎えますし、三菱自動車は三菱重工の自動車部だった時代から数えれば、今年が自動車生産100周年なんです。その中で残してきたお宝が、いくらでも眠っていて、それをまったく利用していなかった。たとえば、イベントで各ブースをのぞくとご理解いただけますが、マツダでいえばロータリーエンジンと格闘してきた歴史があり、その中であれだけの名車を生み出してきているんです。トヨタもハイブリッドのプリウスを開発してきた歴史はもちろん、それ以前の1960年代後半に、ガスタービンハイブリッドにトライしている歴史をお持ちだったりします。ニッサンも1960年にはミケロッティと組んで、プリンス・スカイラインスポーツを出したり。そういった眠っているお宝をストーリー立てて、ヘリテイジとして扱っていくことが、日本に自動車文化が根づく一番の近道だと思うのです。  先日、イタリアに行ったとき気づいたのが、日本車がまず走っていないこと。韓国車ばかりでした。日本にいると分かりづらいのですが、世界ではそういう動きが起こってきています。性能面で言えば、日本車は韓国車や中国車にいつキャッチアップされてもおかしくない。というのも、欧米に追いつけ、追い越せでやってきた日本が、過去にそれをやり遂げたわけですからね。人的なリソースの流出も確実にあって、欧州の伝統あるメーカーの幹部が韓国メーカーの社長になったり、日本から技術者が流れ込んだり。今後、日本車がそういう渦に巻き込まれてもおかしくはないでしょう。
 そうなったとき、日本は何で差別化を図ったらいいのか? 我々にあって彼らにないものは、やはり自動車生産の歴史、ストーリー、DNA、つまりヘリテイジなんです。一過性のブームや人気に頼っていると、いつまでも車が消費材のままであり続けてしまいます。燃費がどうだ、税金がいくら減免されるのか、値引きがいくらなのか? 冷蔵庫を買うのと同じような消費活動をしていると、いつまで経っても消費材の立ち位置からステップアップできない。そうではなく、自動車の価値をもっともっと見つめ直すこと、文化的側面から自動車を見るという目を養うことが大切。そのためにはメーカーや車のストーリー、ヘリテイジを発信していくことが重要なのではないかという思いが、このイベントの根底にあります。  たとえばトヨタのプリウスは、初代から現在に至るまでかなりの苦労をされてきました。そのバックグラウンドのストーリーを一本の線として発信していくと、今のプリウスの捉え方、見え方が変わってきます。今年のスバルのブースには、スバル・360とスバル・1000、最新のレヴォーグを置いてありますが、じつは安全性という線で結ぶことができます。スバル・360の時代から衝突実験を繰り返してきて、歩行者をひいたときに被害者のダメージを軽減する対策を考えてきたのがスバル・1000。伝統的にスバルは安全性にこだわってきたことを線でつないでいけば、メーカーとしてのコアな魅力が見えてきます。ぼんやりスバルが好きといっていた人の意識が、鮮明になることもあるでしょう。

加藤 哲也

自動車を愛するために

 国内には東京モーターショー、東京オートサロンといったビッグイベントがありますが、それぞれインダストリアルなイベント、カウンターカルチャーのイベントで、それだけだと日本の自動車文化が正確には伝わりません。それらがありつつ、このオートモビルカウンシルによって三角形ができあがり、初めて日本の自動車文化のすべてを見せられるのかなと思っています。
 昨年から始まって、今年で第2回目。最初から理解を示してくださったメーカーもいました。昨年開催して、「これをやらない理由はない」と言ってくださったところもあります。「このイベントに出店すれば何台売れるのか?」という明確な台数というリターンを期待できるイベントではない中、共感をしていただけることは本当にありがたいことです。でも、徐々にみなさん気づかれているんだと思います。作っているだけでは自動車を愛せなくなる時代が来る、ということを。
 今後、より理解者を増やしていくことがこのイベントの目的だと思っています。一足飛びに増えていくものではないと分かっているからこそ、長く続けたいですし、その必要があります。まだまだお宝はたくさん眠っています。それらを掘り出しつつ、まだ参加されていただいていないメーカー、インポーター、サプライヤーにも出展いただき、少しずつでも広げていくことが、日本の自動車文化に意味あることだと僕は考えています。

Copyright (c) ENKEI Corporation All right Reserved.
PAGE TOP