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宇井 弘明 氏 ポルシェ356を手放せない理由。

HUMAN TALK VOL.173 宇井 弘明氏 ポルシェ356を手放せない理由。

PROFILE

宇井 弘明
UI Hiroaki

1953年6月21日生まれ 群馬県出身
1977年にカートップ編集部に入り、1985年からベストカー編集部へ。2010年より株式会社 講談社ビーシー取締役/編集局局長を務める。モータースポーツも大好きで、過去にはご自身も数々のレースに参戦して、国内のレーシングコースを走ってきた。
http://www.kodansha-bc.com/bc/

国内で最も発行部数が多い自動車雑誌「ベストカー」。
その編集作業を担っている講談社ビーシーの編集局局長である宇井弘明さん。
幼少の頃からやはり他の人とは違う視点を持たれていたようで、
車に対する「深い愛」が言葉には込められています。
そんな宇井さんのカーライフを振り返りつつ
自動車業界の将来について考えていただきました。

宇井 弘明
「大学4年だったか、勤め始めた最初の年だったか、最初のレストア後の356。外観中心でメッキ類は再メッキしてけっこうきれいに変身しました」

宇井 弘明
356の次に購入したシトロエンGS。初期の水平対向4気筒の1015cc。「ハンドリングと乗り心地は結構よかったけど、オールガラス張りのような室内なので夏は地獄の暑さに」。

 子供の頃から車に興味があって、すごく好きだったんです。思い出として残っているのはお菓子のオマケに世界の車のステッカーが付いていて、それが欲しくてずいぶんとお菓子を買ったこと。周りの友達はヒーローものや怪獣もの、マーブルチョコの鉄腕アトムだとかを集めていた頃に、僕は車のステッカーを集めて、タンスの引き出しに貼っていたんです。あと、車と同時にモータースポーツも好きだったから、当時イギリスに留学した生沢(徹)さん、津々見(友彦)さんを応援しようという記事がある専門誌に出ていて、ファンレターの送り先も載っていたんで「頑張ってください」って手紙を書いたり、海外の自動車メーカーにカタログくださいって送ったりもしましたね。根っからの車好きで、小学校の頃から他の人に言わせれば常軌を逸しているというかね、そこまでしないだろうみたいなことをしていました。中学生になるとクラスに何人か車好きがいて彼らと集まって話をするんだけど、それでも多くはありませんでした。
 高校生時代はバイクに目がいってしまったけど、大学に上がって車に実際に乗れるようになると、生意気にもヨーロッパの古い車を好きになったんです。皆がシビックだチェリーだって騒いでいた頃に皆と同じじゃおもしろくないなって。車の免許を取って最初に買ったのが9万円のコンテッサクーペ。その真っ直ぐに走らない車を1年ぐらい乗った後に75万円のポルシェ356を見つけて、それがどうしても欲しかった。当時の自分にとって75万円は高額だから、父にワーゲンを買うからって言ってお金を借りて(笑)。ただ、ボロボロの車で、いろんなパーツを交換する必要がありました。その頃は知り合いの修理工場に入り浸りでしたね。大学時代にアメリカへ行った際に現地のポルシェディーラーがいろんな古い部品を扱っているというのを聞いて、ちょこちょこバイトして2~3万円貯まるたびにアメリカから部品を買い集めて、ちょうど社会人になる頃にほぼ交換したいパーツがそろいました。よし、356を直すかなって時に、父が車をぶつけてちょうど修理工場に入れていたので、父の車の修理代に上乗せして僕の車を直してくださいって頼んで、自分で集めたパーツをすべて交換してもらいました。

宇井 弘明
1974年、20歳の頃。356Aを入手。「今では15年落ちといっても程度はいいだろうが、これはボロボロでした。アクセルペダルは動かなかったし、再塗装の質もそこそこ。元の色はオフホワイトでした」。

宇井 弘明
2度目のレストア後。エンジンはファクトリーリビルトで、ほぼ新品に近いものをアメリカディーラーから購入。エンジンナンバーも年式に合ったものを購入。ついでに12Vに換装、カークーラーも装着した。

空気みたいな存在

 就職先として、僕は自動車雑誌社にいくつか当たりました。入ったのはカートップ誌。実際に仕事を始めてしまうと356に乗る時間がなくなってきて、車庫に入れっぱなしの日々が続きました。自分で集めたパーツは外装中心だったので、そのうちにオイルやガソリンが漏れ始めて、車検も取ったり取らなかったりして、動かさない時間が長くなってしまいました。エンジンルームから草がはえてきた時には「これはダメだな」って思って、また修理工場に預けることにしました。「仕事の合間に直しておいてよ」って感じで預けたんですが、そこで1~2年放っておかれてしまい、エンジン内のピストンが錆びついて、ますます動かなくなってしまいました。そこまでいってさすがに一念発起して、名古屋の評判のいい業者に頼むことにしたんです。業者さんを呼んだ時、「このまま朽ち果てるか、高い金額はかかるけど今直すか」って決断を迫られ、修理することにしたんです。356は94年にピカピカになって、エンジンもフルリビルトされたものに載せ替えてもらい生き返り、今もサードカーとして走っていますよ。
 働き始めてすぐの頃は、356をメインの車にはできないなっていうことでシトロエンGSっていうコンパクトカーの走りのような車を中古で買って使っていました。これも結構壊れましたね。ウインカーレバー取れたり、ブレーキが効かなくなったり、マフラーが壊れたり……。働き出してから3年ほどで結婚してシトロエンでいろんなところに行ったんですが、行った先々で壊れて置いて帰ってくるっていうのも多かったです(笑)。子供ができてからはホンダのバラードを買いました。シトロエンはエアコンがないから、エアコン装着車にしようって。その時に付けたホイールが、ゴールドのエンケイメッシュでしたね。その後はゴルフ、ローバーと乗って、またゴルフに戻ってからユーノスロードスターと買い換えていきました。今はロードスターがセカンドカーで、356はサードカー。356は車庫にあるだけで安心できて、空気みたいな存在なんですよ。
 何でそこまで惚れ込んだんでしょうね? ヨーロッパ車の中でも耐久性があり、デザイン的に丸いのが僕は好きでしたから、やっぱり356のデザインが好きなんでしょうね。他の人が見るとそうじゃないかもしれないけど、自分の興味の範囲にぴったりハマった。僕が購入したのは356の2代目のA型というモデル。1948年に初代モデルが出て、1956年にA型モデルが出て、1959年にはB型モデルが出て大きくボディが変わるのですが、僕はA型の356が特に好きだったんです。お金もかかったけど、356を40年近く所持してきたことは、自分でも大したものだなって思いますよ。

自動車雑誌「ベストカー」を製作している
講談社ビーシー編集局局長の宇井弘明さん。
移り変わっていく自動車文化をどう見て、彼自身は車に何を求めるのか?
今後登場してくる日本メーカーの新車についても
注目車種などを語ってくれた。

 僕が車を選ぶ際のひとつの基準は、走って楽しいこと。ピックアップというか、機敏さというのかな。356はそんなにパワーがある車ではありません。もともと60馬力だったものを、94年のレストア時に75馬力のエンジンにてして、4500回転しか回らなかったエンジンを5000回転まで回るようにしました。それでもレッドゾーンが5000回転という低回転型。ただ、ボディ重量が850kgぐらいしかないので、結構ピックアップがいいんですよね。4速トランスミッションで、とくに2速、3速のギアリングがいいので、走っていて楽しめるんです。エンジン、車体をすべてひっくるめて、トータルでワクワクする感じがいいっていうんですかね。もちろん、車のデザインも重要です。持つ喜びみたいなところは外せない要素ですよね。少しきどって言うなら、自分のライフスタイルの中のひとつの要素、“生き様”みたいなものを乗っている車、所有している車の中から見られるじゃないですか。そこが車の大きな魅力なんだと思うんです。今後、車を買い替える時にも、たぶん僕の中でのその基準は変わらないと思います。やっぱり楽しい車に乗りたいですね。

宇井 弘明
宇井さんにとって愛車の356は空気のような存在。「これだけ一緒に時間を過ごしてきても飽きないし、所有すること自体にも満足感があります」と話す。

来年以降の日本車に期待

 今は地球規模でCO2低減という大きな流れがあって、性能はいいけどおもしろくない車が多くなってきました。道具としては非常にいいものだけど、要するに車を道具として考えていなくて、そこに楽しさを求める人たちにはちょっと物足りない感じがあると思うんです。生まれてきた世界がEV車しかない時代だったら、その中でどういう楽しさを見つけて行くのかって話になるでしょう。ですが、化石燃料を使った車の楽しさを知っている世代はどこで折り合いをつけていくのかって言ったら、燃費をよくしていく技術を活かしながらも車の楽しさをどう演出しているのっていうところに興味を持っているんだと思います。
 燃費をよくしていったり、EVも含めて新しい技術を磨いていくっていうのもひとつの時代の流れだと思っています。でも、ヨーロッパに目をやると新しいBMWもそうですけど、走る楽しさを残しながらも、かなり燃費を向上させてきているんです。日本みたいに新しい技術で燃費をよくするのもひとつの方法ですが、BMWのようにそうやって車の楽しさを残しつつ昔からの技術を磨く中でトライをしていくのも大事じゃないのかなって思います。そんな中で、この秋から出てくるホンダの新しいハイブリッドシステムなんかはミッションの中にモーターを内蔵していて、ワーゲンのような楽しさを持ちつつ、燃費も良くなっているような車を目指しているみたいです。ホンダらしいと思うし、楽しくてデザインも良ければ、次の車を探す際の購入動機になるのかもしれないですね。
 スポーツカーが減って、若者の車離れという話にしても、教育が関係していると思います。今の20~30代の人たちは車の排気ガスって悪者だと教育されて記憶してきている。だから、必要性を感じていないのかな、できれば使わない方がいいんだなっていう意識なのかもしれません。そういう世代が選ぶのはワゴンやミニバンとか、エコカー、ハイブリッドカーになってしまうんでしょうね。だから、その次の世代に向けてスポーツカーを少しずつでも出していけば、興味を持ってくれる若い層が出てくる可能性もありますよね。トヨタ86にしても次のロードスターにしても、あるいは世界を見渡せばいろんなスパルタンなスポーツカーが出ていて、そういう車の存在は必要だと思うし、これからもなくならないと思うし、大事にしていきたいなと思うんですよ。
 近年の国産車はデザイン的にもヨーロッパ車にまったく遅れてしまっている時期が続いたと思うんですけど、来年ぐらいから変わってくるんじゃないかなって僕は予想しています。韓国車の台頭による刺激もあると思うんですが、そこが弱いと日本車メーカー自体が気づき手を打ってきているんです。4月のニューヨークショーで出てきたスバルのWRXとか、デザインを含めて新しいスポーツカーの形がだんだん変わっていくのかな、と。WRXはデザイン的にも性能的にもかなり僕は期待しています。14年に出るロードスターも楽しそうな感じですね。NSXも今度の新しいハイブリッドシステムと、パフォーマンス的にたぶんツインターボになって相当なパワーを出してくるので、ヨーロッパのハイブリッド系のスーパースポーツの量産に近い位置づけで出てくると思うので、それらを含めて日本車が元気を取り戻すのかなって楽しみにしています。もちろんフィットみたいな、本当に役に立つコンパクトカーもおもしくなってくるだろうし、日本の車産業がにぎやかになってきて、おもしろい、乗っていて楽しい車が増えてくれることを期待したいですね。
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